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28. 終末期「私の想い」㊥~介護する長男(84)

本人が自分らしく生きられないなら、木幡サト子さん(104)の延命治療を望まない長男・英雄さん(84)。自宅で一人暮らしを送りつつ、母親が生活する医和生会小規模多機能型「すばる」に毎夕、食事介助に通っています。母親との何気ない、でも大切な数時間-。連載2回目は、終末期の母親を介護する英雄さんの想いに迫ります。

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↑母親のサト子さんと何気ない時間を過ごす長男の英雄さん(左)=2017年3月29日午後4時16分・医和生会小規模多機能型「すばる」


● 母親の好物を持って
自宅の台所の昼下がり、サト子さんの好物を準備するのは英雄さんの大切な日課です。バナナ、ヨーグルト、チーズ、乳酸菌飲料は欠かさず、ようかんやまんじゅうなど日替わりの和菓子を袋に詰めます。午後3時半ごろ自転車で出発し、自宅から川沿いの堤防を通る道のり約20分ペダルをこぎます。「いつも何も考えずに自転車に乗っている。この前は雨で歩いて来たら、次の日脚が痛くなってだめだ」とにっこり。これが英雄さんの午後です。

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↑英雄さんが自転車で通う川沿いの道=2017年3月29日午後3時31分・いわき市平釜ノ内

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↑誕生日会で着たちゃんちゃんこが掛けられているサト子さんの部屋=2017年3月29日午後4時21分・「すばる」


● 誕生日会後、何気ない会話
サト子さんの104歳の誕生日会から4日後の3月29日夕。部屋の壁には、ひ孫の七五三の写真が貼られ、誕生日会で着たピンクのちゃんちゃんこが掛けられています。タンスの上には職員からの誕生日メッセージの色紙も。昨夜、37度の熱を出して額に冷却剤を貼ったサト子さんはじっと窓の外を眺め、英雄さんはそのサト子さんを静かに見つめています。サト子さんが「今日はどっか行くのか?」とつぶやきます。英雄さんが「食べたらここさ寝るんだ」というと「やることねえ」とサト子さん。「やることねえから寝るんだっぺ」と、英雄さんは笑いました。


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↑英雄さんが介助するサト子さんの夕食=2017年3月29日午後4時35分・「すばる」


● いつもの夕食の時間
英雄さんがサト子さんの入れ歯の準備を終えると、スタッフが夕食を持ってきました。サバのみぞれ煮、コマツナの煮浸し、シャキシャキ肉団子、フキの味噌和え、根菜サラダ、ご飯、みそ汁の586キロカロリー。英雄さんは、肉団子をスプーンで細かく崩し、ご飯と一緒にサト子さんの口に運びます。飲み込みを確認しゆっくりと。「終わりだぞ」と空になった茶碗を見せ、袋からサト子さんの好物を取り出します。1ピースのチーズを3つに割って「はい」と食べさせ、茶碗に移し替えた乳酸菌飲料をゆっくり飲ませます。「腰が痛くてだめだねえ」「背中が痛い」というサト子さんに、英雄さんは「どの辺だ?」と心配そう。ベッドを倒して楽な姿勢を取らせ、布団を首まで丁寧に掛けます。「また明日も来るぞ」。目を閉じたサト子さんにそう言い残し、英雄さんは部屋を出ました。午後5時5分、西日を背に自転車をこいで帰っていきました。

● 驚異の回復力
サト子さんは2016(平成28)年3月、いわき市内の病院に搬送されました。それまで通所サービスに通っていたほど元気だっただけに、この急変はまさに青天の霹靂(へきれき)。Aさんは「貧血、脱水で内臓も弱り、医師からその日に亡くなることを宣告された」と振り返ります。急変の可能性も示唆されながら一カ月後に退院し「すばる」に。近所住民からの「気力がすごい人だからすぐ良くなる」という期待通り、サト子さんは着実に回復して今では食事も残さず平らげます。

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↑乳酸菌飲料をサト子さんに飲ませる英雄さん=2017年3月29日午後4時48分・「すばる」


● 自宅で看取りたい理想と現実
これまで家や家族を支え、頑固一徹に夫の葬式を自宅で行い、きょうだい全員を介護したサト子さんの背中をずっとそばで見続けてきた英雄さん―。「無理やり生かすための延命治療を拒み、最期の一週間は自宅で過ごしてほしい。母親は夫のことを自宅で看取っていて、自分もそうしてほしいと考えているはず」。去年9月4日「わたしの想いをつなぐノート(わたしノート)(※記事最後に解説)」にそう母親の想いを代弁します。英雄さんに先月3月13日、あらためて現在の心境を尋ねると「今も延命治療を望まない。でも、最期の一週間を自宅で過ごせてあげられるか分からない」と複雑な胸中をのぞかせました。サト子さんは毎月二回、一泊二日で自宅に帰っていますが「家でオムツを交換するだけでも大変で、それができるか…」。自分らしく生きてほしい理想と現実に葛藤する英雄さん。今日も母親の好物を携え、自転車をこぎます。

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↑自転車で帰る英雄さん=2017年3月29日午後5時5分・「すばる」

(4月14日に続く)


※「わたしの想いをつなぐノート」とは
終末期の自分らしい過ごし方を考えるきっかけにしてほしいと、いわき市が作成した冊子。治療の回復の見込みがなくなる段階の終末期、延命治療を望むか、最期を迎えたい場所などの意思表明を記します。
医和生会山内クリニックの家庭医・岩井里枝子医師がこのノートをコラムで紹介しています(http://iwakikai.sakura.ne.jp/doctor/htclm1610.html


【関連記事・動画】
・記事「終末期「私の想い」㊤~104歳・木幡さん」 2017年3月31日投稿
http://ymciwakikai.blog.fc2.com/blog-entry-150.html

・「終末期『私の想い』㊦~介護する職員」 2017年4月14日投稿
http://ymciwakikai.blog.fc2.com/blog-entry-160.html

・記事「104歳、おめでとう!・「すばる」で誕生日会」 2017年3月25日投稿
http://ymciwakikai.blog.fc2.com/blog-entry-146.html

・動画「木幡さんの誕生日会・ハッピーバースデー」 2017年3月25日投稿
https://youtu.be/9Mwl30JKMVs

・山内クリニックの家庭医・岩井里枝子医師のコラム「わたしの想いをつなぐノート」 2016年9月16日投稿
http://iwakikai.sakura.ne.jp/doctor/htclm1610.html

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