終末期「私の想い」㊦~介護する職員

医和生会小規模多機能型「すばる」で静養する木幡サト子さん(104)を献身的にサポートしている職員。サト子さんが望む最期を実現させようと、担当の介護支援専門員(ケアマネジャー)で「すばる」の管理者・日塔寿子さんは、長男の英雄さん(84)と話し合いながら職員一丸で介護に当たっています。長男の英雄さんの期待に応え、サト子さんをサポートする現場スタッフの想いとは-。3回連載の最終回。

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↑サト子さんを温かく見守る日塔さん=2017年4月5日、いわき市の医和生会小規模多機能型「すばる」


● 容体悪化、乗り越えホッと
3日前から前日まで貧血の恐れが生じたサト子さんを慎重に見守っていた4月5日。日塔さんは午前10時半、消化のため食後に座位の姿勢を続けるサト子さんのリクライニングベッドを横に倒します。布団を掛けながら「調子はどうですか?」と明るく声を掛けます。英雄さんから「急変した場合は救急車を呼ばず、『すばる』の対応で」と任され、万一も覚悟していました。それでもこの日、声掛けにもしっかりと反応するサト子さんの様子に、日塔さんは安心した表情を浮かべました。

● 慎重に見守った当初
サト子さんが「すばる」に来たのは2016年4月。病院を退院したものの、家での生活が難しいと判断され来所しました。日塔さんは「食事するのも困難な状態で、病院からの移動中にも急変する可能性があると言われていました」と、当時を振り返ります。「無理はさせず、寝起きはサト子様のサイクルに合わせ、食べられる量の食事を少量から提供いたしました」。体温、血圧などのバイタルチェックを欠かさず、表情などから体調を読み取り、経過を見守ったところ、1カ月後には食事も全部食べるようになり、安定してきたといいます。

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↑スタッフから誕生日メッセージを受け取ったサト子さん=2017年3月25日、「すばる」

● 家族への想い、伝わり感慨
日ごろの介護を通し、サト子さんの家や家族への想いに触れる場面も。サト子さんは親心がわくのか、よく職員に「結婚しているか?」などと尋ねます。さらに時折、布団のシーツの端を持って手指を動かします。奇妙な動きに疑問を持った日塔さんは後に、サト子さんが100歳近くまで裁縫をしていたことを知り、それが針を動かす動きだと気づきます。かつては針仕事で家計の手助けもしていたというサト子さんの体に、今もその運針が染みついているかのようで、日塔さんはその“針仕事”を見るたびサト子さんの家族への想いが浮かび、感慨で胸がいっぱいに。「サト子さんの希望をかなえたい」とあらためて思う瞬間です。

● 想いをかなえる提案
サト子さんが最期どのように過ごしたいかを知るため、日塔さんは去年9月、英雄さんに聴き取りをしました。延命治療をせず、最期の1週間を自宅で過ごしたい希望を確認し、「わたしの想いをつなぐノート(わたしノート)(※記事最後に解説)」に記しました。この実現に向け、月2回自宅に帰ることを提案しました。日塔さんは「ご自宅で訪問診療を受けることにより、最期自宅で過ごすための医療・介護体制を事前に整えられる。仮に最期家に帰れなくても、少しでも家で二人の時間を過ごしてほしい」と、その提案の意図を説明します。サト子さんは帰宅すると、親戚や近所の友人が訪れて触れ合っているといいます。

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↑サト子さんにお祝いの言葉を送った日塔さん=2017年3月25日、「すばる」

● サト子さんにぴったりの誕生日会
先月のサト子さんの誕生日会の準備では、英雄さんへの聴き取りを基に、サト子さんの好きな果物を盛り付けたケーキを作ろうと計画。当日は、ほかのご利用者様や職員でケーキを作り、メッセージ色紙をサト子さんに手渡しました。日塔さんは「『ありがとう』と言ってくださった」と振り返り「お祝いされているということも自覚され、104歳でもまだしっかりされている」と、その生命力に驚きます。

● 「後悔させたくない」
「最期はどうなるか誰にも分からないが、サト子さんと英雄さんに後悔をさせたくない」。そう想う日塔さんは「英雄さんがサト子さんの最期の一週間を家で介護する自信がなく、でもそれを望むのであれば訪問提供するなど、医療と連携して最善を尽くしたい」と話します。「最期の時間を『すばる』に託してくださりありがたい。サト子さんや英雄さんの想いに応えたい」と力を込めます。

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↑西日差す夕方の「すばる」=2017年4月13日

● それぞれの終末期
最期を迎える人の数だけある終末期のドラマ。サト子さんの物語も、その数あるうちの一つです。サト子さんらしい最高のフィナーレを演出しようと、家族や支援者の想いがそれに応えています。今もあちこちで繰り広げられ、あなたも必ず迎える終末期。「あなたの想いは?」。

<終わり>

※「わたしの想いをつなぐノート」とは
終末期の自分らしい過ごし方を考えるきっかけにしてほしいと、いわき市が作成した冊子。治療の回復の見込みがなくなる段階の終末期、延命治療を望むか、最期を迎えたい場所などの意思表明を記します。
医和生会山内クリニックの家庭医・岩井里枝子医師がこのノートをコラムで紹介しています(http://iwakikai.sakura.ne.jp/doctor/htclm1610.html


【関連記事・動画】
・記事「終末期「私の想い」㊤~104歳・木幡さん」 2017年3月31日投稿
http://ymciwakikai.blog.fc2.com/blog-entry-150.html

・記事「終末期「私の想い」㊥~介護する長男(84)」 2017年4月7日投稿
http://ymciwakikai.blog.fc2.com/blog-entry-155.html

・記事「104歳、おめでとう!・「すばる」で誕生日会」 2017年3月25日投稿
http://ymciwakikai.blog.fc2.com/blog-entry-146.html

・動画「木幡さんの誕生日会・ハッピーバースデー」 2017年3月25日投稿
https://youtu.be/9Mwl30JKMVs

・山内クリニックの家庭医・岩井里枝子医師のコラム「わたしの想いをつなぐノート」 2016年9月16日投稿
http://iwakikai.sakura.ne.jp/doctor/htclm1610.html

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